2008年03月03日

キューピットの”いたづら”が・・・メロドラマの古典的名作!! 「めぐり逢い」


めぐり逢い
おすすめ度 :
コメント:心地よく泣けてくる


ニューヨークへ向かう豪華客船のデッキで知り合った画家のニッキーと歌手のテリー。二人は次第に惹かれ合い、恋に落ちる。お互いに婚約者がいる身の彼らはそれぞれの恋を清算して、半年後、エンパイアステートビルの屋上で再会しようと約束したが……。

これは典型的なすれ違いドラマである。キューピットの悪戯で会えなくなってしまった二人は、あくまでも愛を貫くのか、諦めるのか・・・。ラストシーンは感動的だ。

ニューヨーク航路の豪華船コンスティテュウション号の美しい船客テリイ(デボラ・カー)は、置き忘れたシンガレット・ケースが縁でニッキイ(ケイリイ・グランド)と知りあった。

2人は一緒に食事をするほどの仲になったが、共に婚約者のある身で、船内のゴシップになるのをさけて、別行動をとらねばならなかった。

船がナポリに着いたとき、ニッキイはテリイを誘って彼の祖母の家をたずね忘れ難い旅情に1日をすごした。ここでテリイはニッキイが才能のある画家であることを知る。

思い出深い1夜を、ニューヨーク港の船内ですごし、6ヵ月後の再会を約して2人は別れた。その時こそ2人の愛が実ることを信じて……。

やがて誓いの宵が来た。ナイトクラブに出演して成功したテリイは、約束の場所、ビルの屋上を見上げながら急ぐ途中、走ってきた車にはねられてしまった。それとは知らぬニッキイはそぼ降る雨にぬれながら、夜おそくまで待ち続けた。

数ヶ月たったある日、ニッキイは画商から自動車事故で不具になった女性が、彼の描いたテリイの肖像画を欲しがっているが、金が無くて買えないという話をきき、今はすべてをあきらめて、その絵をその女性に贈った。

その後とある劇場でニッキイは車椅子に乗ったテリイにあったが、昔と違う彼女に気づかず、別れてしまった。

クリスマスの日、あの不幸な女性への贈物にと、ニッキイは祖母のショールをもって彼女をおとずれる。彼女はソファに足を伸ばしたまま、座っていた。そしてテリイだと分かると彼女にこう云うのだ。
「実はあの時、僕は行かなかったのだ」
「だったら、”ごめんなさい”ぐらいはいうべきよ」
「あの時は怒っただろう。待ちぼうけで」
「ええ、かんかんになったわ」
「どれくらい待った?深夜まで?」
「えっ、ええ・・・」
「雷雨の中で・・・」 
      *    *    *
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 君の絵を描いたよ。僕の最高傑作だ。画商によると

欲しいと言った女性は貧乏で、その上、足がーーー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ニッキーが奥の部屋の扉を開けるとそこにはあの絵が飾ってあった。総てを知ったニッキイは、ソファに横たわり涙にうるむテリイをしっかり抱くのであった。外には真白な雪が音もなく降りつづいていた。

幸せはいつの日か、きっと微笑みかける。苦しみに耐えた後に、それは待っていてくれるのだ。この映画のように・・・。

1957年 アメリカ/カラー 監督 レオ・マッケリー 出演 ケイリー・グラント/デボラ・カー/リチャード・デニング
ニックネーム choko22 at 13:19| Comment(2) | TrackBack(6) | デボラ・カー

2008年02月28日

理想のカップルが描く夫婦愛の物語 「グレン・ミラー物語」


グレン・ミラー物語
おすすめ度 :
コメント:もう最高


この映画は不朽の名作である。私は軽く50回は見た、そしてその都度泣いた。幾ら泣くまいと思っても涙腺の方が云う事を聞いてくれないのだ。

ジェームス・スチュアートとジューン・アリスン、アメリカの“理想のカップル”が謳いあげた強く、美しい夫婦愛の物語。公開当時は絶賛を博した作品だ。

1953年製作、監督はアンソニー・マン、主演は上記の二人、それにルイ・アームストロングやジーン・クルーパー、ベイブ・ラッシンと言ったジャズ界の大御所が多数出演している。

物語はグレン(J・スチュアート)が質屋へ楽器のトロンボーンを請出しに行くところから始まる。音楽に情熱を持ちながらも商売道具の楽器を質屋に出し入れしなければならない貧しい生活。彼はコロラド大学時代の恋人ヘレン(ジューン・アリスン)に首飾りをプレゼントしたいのだが手が出ない。楽器を持ってバンドのテストを受けに行くが落ちて、トロンボーンは又も質屋の飾り物になる。

ある日、質屋の主人が声をかけてくれた。ベン・ポラックが新バンドを編成するためにオーディションをしているというのだ。彼は早速友人のピアニスト、チャミー(ヘンリー・モーガン)と出かける。チャミーは逢うたびに違う車に乗っているという車キチだ。

チャミーはベンに採用され、グレンも編曲者として職に有りつけた。楽団は早速旅に出た。 旅の途中、グレンはヘレンに電話して無理やりデートの約束を取り付ける。

ヘレンは婚約者とのデートも断ってグレンを今か今かと待つが、グレンからは何の連絡もない。「許せない、せめて電話すべきよ」と彼女はおおむくれだ。時計は11時半。
「ふざけた人、二度と顔も見たくない」持っていた本を机に叩きつける。

深夜である。やって来たグレンがヘレンを小声で呼ぶ。彼女は目覚めない。グレンの声が次第に大きくなる。そして、怒鳴る。「ヘレン!!」と。
ビックリして飛び起きるヘレン、二階の窓から卒を覗かせる。
「いたのか」とグレン。
「帰って」
「いやだよ、逢いに来たんだ」
「静かにしてよ、近所が起きるわ」
「話をしにきたんだ、いいだろう」
「大きな声を出さないで。降りていくわ」
ヘレンは寝巻き姿のまま、玄関へ出て行く。ヘレンは怒りを爆発させるが、グレンの
「変わらないな、すぐ怒るけど、きれいだ」という殺し文句に負けて、入り口の階段に並んで坐る。グレンは質屋で安く手に入れた真珠の首飾りを彼女にプレゼントする。

その日、グレンとヘレン、池の畔で話をする。大学のグリークラブの歌う「茶色の小瓶」が聞こえてくる。
「私、あの歌が大好きなの」とヘレン。
「僕にははっきりした将来の目的がある。トロンボーンを吹くだけじゃない、楽団を持って自分の音楽をやるんだ。楽団も個性を持つべきだ。うまく言えないけど、編曲で独特の音が出せる筈なんだ」

時が経過、いつしか2年の歳月が流れていた。ある夜、ニュヨークの町を歩いていたグレンは「茶色の小瓶」の歌をレコード店の前で聞く。グレン、急に思い立ちヘレンに電話を入れて「ニューヨークまで出て来れるか、結婚しよう。もう待てない」とい
う。そして、プロポーズに応じて出てきたヘレンと結婚する。

ハネムーンは コニーズ・インだ。そこではジャズの王様ルイ・アームストロングが出演中でルイはジーン・クルーパーやベイブ・ラッシン、グレンをステージに呼び上げる。ここで演奏される「ベイジン・ストリート・ブルース」は前半の白眉。ここでの競演はジャズファンにとっては応えられない熱いジャム・セッションだ。ヘレンは疲れでうつらうつら。

グレンは劇場の仕事で忙しい。そんなある日、ヘレンが「夢はもう捨てたの?新しい音は」とグレンに聞く。作曲の勉強を続けるには金がいる。ためらうグレンにヘレンは勉強を続けるように言う。「夢を諦めては駄目。ホテル暮らしなど勿体ないわ。アパートをかりましょ」と。

グレンは再び作曲の勉強を再開した。経済的には更に逼迫した。しかし二人は明るかった。目標を忘れなかったからだ。自分の音をみつけるという・・・。勉強の再開は名曲と言われる「ムーンライト・セレナーデ」の誕生となって結実した。

かくしてミラー楽団は発足した。各地を巡業しての闘いだ。泥道に車輪を落として遅れたりで収入は僅か一日一ドル。楽団を維持するのがやっとの有様だ。気を取り直してサイ・シュリブマンとの契約先のボストンに向かうが、今度は雪道でグレンの車がエンコ。ヘレンとチャミーに事情を説明に先に行って貰い、グレンは数日遅れて到着する。

ヘレンはボストンで入院していた。疲労による流産が原因だった。グレンは「妊娠してたとは・・・」と絶句した。医師の説明では・体も危なかったそうで、二度と子供を産めないそうだ。更に悲運が続く。金が底をつき、車も売却、楽団は解散になった。チャミーも自分の車迄売って協力する。

グレンはヘレンを病院に見舞った。そして言うのだ。
「僕たちの子供を持とう。男の子と女の子をひとりずつ」
「私は・・・」
「医者から聞いたよ。分かってる。子供を欲しがっていた君のために・・・」
泣かせる場面である。
「僕は文無しの失業者だぞ」
「でも愛してるわ」
「僕も愛してる」
「嬉しい。結婚して初めて聞いたわ」
微笑み合う二人。

そして転機が来た。そっぽを向いていた成功の女神がやっと微笑みかけたのだ。サイ・シュリブマンの経営するダンスホールは専属の出演バンドを探していた。グレンにバンドを再結成しろという。金は出すから助けてくれと義侠心に訴える。グレンはOKした。

新バンドの練習が始まった。練習の最中にリード・トランペッターが唇を切るアクシデントが発生、窮余の一策でクラリネットのリードに変える。これが成功した。新しいサウンドが遂に発見されたのだ。

ダンスホールは連夜の超満員、ミラー・サウンドは大衆に受け入れられたのである。満員のホールでグレンが演奏中に舞台を降りてヘレンの傍へやってきた。
「誕生日の贈り物だ」
「私の誕生日は11月よ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    去年の誕生日のだ。今度のは本物だ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
と真珠の首飾りをヘレンにつけてやる。

こうしてグレンは成功の階段を登りはじめた。第2次世界大戦が勃発し、グレンは応召する。そしてバンド編成の許可を貰って戦地の慰問をして将兵を元気づける。

グレンはパリで特別番組に出演することになり、ロンドンから霧の深い海に向かって飛び立つ。

だが、飛行機はパリに到着していなかった。

ラストのラジオから流れてくる放送に耳を傾けるヘレン。チャミーとサイ・シュリブマンもヘレンの傍にいる。
「この曲をアメリカのご家族に捧げます」
ラジオから聞こえてきた曲は、「茶色の小瓶」である。ヘレン、グレンの写真のそばに飾ってある茶色の小瓶を取り上げて頬ずりする。その頬を伝い落ちる涙・・・・・

胸が痛む・・・涙がまた・・・。
ニックネーム choko22 at 12:49| Comment(0) | TrackBack(1) | ジューン・アリスン

2008年02月22日

出会い、それは夢のかなたにあった・・・・・「心の旅路」


心の旅路 特別版
おすすめ度 :
コメント:愛は再びめぐりくる?


過去を二度も失った男の愛の変遷を描いた秀作。1942年製作、1947年公開のモノクロ映画。文豪ジェームズ・ヒルトンの原作を叙情派の名匠マーヴィン・ルロイが映画化、出演はロバート・コールマンとグリア・ガースン。

昔、この映画を観て泣いた記憶があった。今度は泣かないぞと思って見直したが、相変わらず泣かされてしまった。心地よい涙である。涙もろい人には必見の名画だ。

第一次世界大戦後のイギリスを舞台に、戦争で記憶を失った軍人が収容されている、とある丘の上の精神病院から映画は始まる。

或る日のこと、過去の記憶を完全に喪失しているスミス(ロナルド・コールマン)のところへ老夫婦が面会に来る。期待するスミスだったが、人違いであった。スミスは戦場で重傷を負いショックでそれまでの記憶を失い言語障害に陥っていた。
「よくあることなんだ」と係官は言った。

スミスは外へ散歩に出た。霧が深かった。とてつもない霧の深さだ。その時、鐘が鳴り、「戦争が終わった、休戦だ」と叫び声を挙げて門番が部屋を飛び出して行った。スミスは誰も居ない部屋に入り、そこから門の外へ出た。

メルブリッジの町は休戦の報で沸き立っていた。人波に押されて歩くスミス。やがてその波から逃れるように煙草屋に入った。出てきた老婆は「ちょっと待っていて」と奥へ引っ込んだ。精神病院へ電話を掛けに行ったのだ。

その時、折りよく店に入ってきたポーラ(グリア・ガースン)は「ここに居ちゃいけないわ」とスミスを外へ逃がしてやる。

スミスは歩きすぎて疲れていた。後を追ってきたポーラが「あなた、疲れてるんでしょ。いいところがあるわ、行きましょ」とスミスを酒場に誘う。

一杯飲んだ後、ポーラは、
「私、劇場に出る時間なの。あなた、良かったら来ない?楽屋からだと良く見えるわよ」

楽屋で舞台衣装に着替えをしながら、「あなたのこと、話して」と聞く。彼は自分が言語障害でしかも記憶喪失であることをポーラに話す。
「自分が誰かも分からない」と。
「でもあなたがいい人だってことは分かるわ。今の名前は何ていうの?」
「スミスだ」
「スミシィと呼んでもいい?」
彼は頷いた。ポーラは舞台に出て行く。彼女は看板娘の踊り子だった。

休戦で沸く場内でポーラは他の踊り子たちと歌い踊る。椅子に座って見ていたスミスは椅子から転げ落ちた。疲れとインフルエンザに掛かっていたのだ。

やがてポーラの看病もあってスミスはようやく快方に向かう。彼女に愛が芽生え始めていた。

或る日のこと、病院の門番の男が酒場に入って来た。脱走したスミスを探しているのだ。ポーラは彼を連れて、安全に療養出来る田舎へ隠れ住むことを考え、町を後にする。

「世界の果てね。美しくて淋しいわ。でも、ここならきっと安全だわ」
二人は湖畔の小さな宿に婚約者同士として泊まった。ポーラが湖畔で休息しているスミスの所へ手紙を持ってやってきた。スミスがリヴァプールの新聞社に送った原稿が認められたのだ。少ないながら小切手も入っている。ポーラは喜ぶ。
「もしかして、戦争前は作家だったのかしら・・・」
「ポーラ、恥ずかしいんだが、君を・・・君を愛している。」
「気を使っているのね」
「違う、結婚して欲しいんだ。2ギニーを資金にね」
「私にとって、あなたが一番大切な人よ。煙草屋で出会ってからずっとあなたから目を離せなかった」
「これからも私から目を離さないで」
「私と、本気で結婚したいと?心からそう願うの?」
「何よりそう願うよ。君と一緒に人生を始めたい。君なしの人生なんて・・・」
「気が変わる前に答えるわ。返事はイエスよ」
熱いキスを交わす二人。

こうして二人は結婚した。最初の結婚式を教会で上げた。少ない参列者ながら村人たちの祝福を受けて。二人は車で新居に入った。表戸を開ける時、戸がギィときしんだ。
「油を注さないと・・・」と言いながら玄関に向かうが、杏の木の枝が突き出ている。
「切らないと」
「いいえ、きれいだわ」とローラが微笑む。
スミスは木を除けて玄関の扉を開ける。カチッと音がして開く扉。二人の新生活の門出だ。

幸せに満ちた生活が始まり、子供まで授かった。そして病院を脱走してから三年の日が経っていた。或る日、スミスはリヴァプールの新聞社から作家の契約に来いという
招聘を受けて、一人でリヴァプールに向かった。トランクにみすぼらしい下着などを詰めて。

「ホテルはグレート・ノーザンがいいわ。駅にも近いし」ポーラに言われたようにノーザンホテルに宿を取り、スミスは新聞社に向かう。そして道路を渡りかけた時、悲鳴が上がった。新聞社の看板を見上げて歩いていたスミスが車に撥ねられたのだ。

頭を強打した彼の意識が戻った時、不思議そうに自分の服を見た。警官がやって来た。
「お名前は?」
「チャールズ、チャールズ・レーニア」
「職業は?」
「連隊大尉です」
「住所は?」
「アラスの塹壕」
「何ですと?!」
事故の衝撃でスミス時代の3年間のことは記憶が消し飛び、その代わりに昔を思い出したのである。「3年間、一体私はどこで何をしてたんだ?」それを調べる手がかりは何もない。あるのはポケットの鍵ばかりだ。

チャールズが我が家に戻った日、それは父親の葬式が済んだばかり。父は大富豪だった。兄弟や親戚は「遺産を狙って帰って来たのだ」と言う。姪のキティ(スーザン・ピータース)は子供の頃からの憧れだったチャールズに興味を持った。

月日が流れた。チャールズは会社の経営者になり、手腕を振るっていた。姪のキティは実の叔父でないのを良いことにチャールズにベタ惚れし、大学を卒業して二人は婚約する仲になった。

そしてその間、ポーラはスミスの失踪宣告を受け、結婚は解消、子供も失っていたのだ。

チャールズの記事と写真が以前新聞に出たことがある。ポーラは速記を習い秘書として彼のそばで勤める身になっていた。マーガレットと名前を変えて・・・。

キティを婚約者として認めねばならない辛さ、死んだ子供がいたことをチャールズに話しても、彼は思い出しもしなかった。時々、ポケットから鍵を取り出して物思いに耽っている彼を見ても、それが何であるか云うことも出来なかった。

チャールズとキティの結婚が決まった。思い余ったポーラは彼女に想いを寄せる心理学者ジョージに相談する。妻だったことを打ち明けると言うのだ。
「君の望みは彼の名前か、それとも彼の保護?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

      昔のあの人、そして、愛よ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

結婚式の前日、教会で式の曲を聞く二人。曲を聴いている内にチャールズは何かを思い出しかける。キティが傍に行っても他人を見る様な目である。泣き出すキティ。
「ごめんよ、ぼんやりしてて」
「いいの、今わかってよかったの・・・。私たち、だめよ。本当は分かっていたの。自分の幸福だけ追っていたわ。幸せ過ぎて分からなかった。あなたの心に居るのは私ではないと。私を他の人と錯覚してるんじゃないかと、他の女性と。私はその人に勝てないわ」
そしてキティは去って行った。

ポーラはチャールズがリヴァプールへ行ったと執事に聞いて後を追いかけた。だが、12年前に来たグレート・ノーザンホテルでジョン・スミスの名前の入ったトランクを見つけても「私の物ではない」と云うのだ。過去への扉は閉ざされたままだった。

チャールズは選挙に出て当選した。その日、彼はポーラに求婚、ポーラもそれを受け入れた。彼女は名誉、そして地位も得た。だが、心の虚しさは晴れなかった。チャールズが優しく接して呉れれば呉れるほど耐えられなかった。

チャールズが贈ってくれた貧しいネックレスを手にして涙を流す。チャールズが部屋に入ってきた。ネックレスに気がついて、彼は云う。
「贈り物かね」
「安物よ」
「君にとってはエメラルドより大事なんだね」
「私の瞳の色だと、そうでしょ」
とネックレスを目の傍へ持っていく。それでも彼は何も思い出さない。
「いつまでも亡くなった人にこだわり続けるのはよくない」
「あなたが言うなんて・・・」
部屋を出て行くチャーリー。
ポーラの胸は絶望にはじけそうだった。
「スミシー・・・」
顔を覆って泣くポーラ。

ポーラは旅に出ることにした。一人旅である。昔泊まったデボンの宿に向かったのだ。チャールズに見送られて彼女は出発した。

メルブリッジ工場でストライキが勃発した。チャールズは部下と現場へ急いだ。そして労働者たちの要求を飲んだ。町は昔のあの日のように沸き立っていた。彼は町を歩いた。
「あの角を曲がったところに煙草屋がある」と云って煙草屋に入った。
「この町は初めての筈では」
「そうだが」
「でも来る時には通らなかった裏通りの煙草屋を、どうしてご存知で?」
チャールズはアッと思った。記憶の扉が少しづつ開き始めたのだ。彼はタクシーを拾い、丘の上にある精神病院を見つけた。そして、あの日の行動を辿り出した。

ポーラは昔泊まった湖畔の宿を出る時、宿の新しい女主人が、ある紳士が前の女主人と牧師のことを聞きに来たと告げた。ポーラは云った。
「紳士はここに?」
「いいえ、昔住んでた家を探しているとか・・・」
ポーラの顔に喜びの色が浮かんだ。

家の前に紳士、いやスミシーが立っていた。彼はそうっと戸を開けて見る。ギィッというきしんだ音がした。桜の木の枝をどかして扉の前に立ち、持っていた鍵を入れる。と、カチッという音がして玄関が開いた。離れて見守っているポーラ。
「スミシー」
と声を掛ける。
振り返るスミス。
「ポーラ!」
「おお、スミシー!! お帰りなさい、あなた」
杏の花の咲き乱れる庭で抱きあう二人、歓喜のキスをかわす。

ハリウッドの貴婦人と言われるグリア・ガースンと銀幕の紳士、ロナルド・コールマンが競演した愛の物語である。

今時、12年間もそのまま二人が暮らした家が残っていたとは信じがたいが細かい疑問は抜きだ。それよりなんというグリア・ガースンの
美しさであろうか。ロナルド・コールマンは公開当時、八の字のヒゲ、コールマンヒゲで有名になったのを覚えている。

これはメロドラマの古典的名画だ。若い人にも、カッタルイなどと云わずに見てもらいたい作品である。

現代にも心を病んでいる人は多い。でも決して希望を失わないでいて欲しい。希望、それこそが再起への道標なのだから。

1942年 アメリカ・モノクロ 監督 マーヴィン・ルロイ 出演 ロバート・コールマン グリア・ガースン 
ニックネーム choko22 at 18:23| Comment(0) | TrackBack(0) | グリア・ガースン

2008年02月20日

粋でお洒落でコミカルなシンデレラ・ストーリー 「麗しのサブリナ」


オードリー・ヘプバーン/麗しのサブリナ/PHNA-102305
おすすめ度 :
コメント:ヘップバーンがキュート


「ある高級住宅地の大きな屋敷に小さな娘が住んでいました・・・」
お伽話を思わせるナレーションで始まるこの映画、甘くハスキーな声は、主人公サブリナを演じたオードリー・ヘップバーンのものだ。


サブリナ(オードリー・ヘップバーン)は大富豪ララビー家のお抱え運転手の娘。ララビー家の次男デイヴィッド(ウイリアム・ホールデン)に夢中だが、プレイボーイの彼は子供っぽいサブリナなど見向きもしない。


失意のままパリの料理学校に留学したサブリナは、2年後、洗練された美女となって帰国する。


生まれ変わったようなサブリナはララビー家のパーティに招かれる。そのシーンの衣装はジバンシィのドレスだが、ヘップバーンの美しさを際立たせている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

生きがいのある生涯を送るには、傍観者でいてはいけない。
 
 人生は自分の手でつかむのです。恋も同じです

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 サブリナのセリフだ。


「サブリナ、いままでどこにいた?ぼくの車庫のすぐ上にいて、なぜ気づかなかったんだろう」
こう云って早速デビッドはデートに誘うのだ。ところが腰を痛めて兄のライナス(ハンフリー・ボガート)に代わりを頼む。堅物で女に関心ないと思ったライナスがサブリナに恋し、サブリナも彼の誠実さに惹かれていく。


二人の気持ちを察知したディヴィッドは・・・・・


1954年 アメリカ・モノクロ 監督 ビリー・ワイルダー 出演 オードリー・ヘップバーン ウイリアム・ホールデン ハンフリー・ボガート
ニックネーム choko22 at 12:53| Comment(0) | TrackBack(0) | オードリー・ヘップバーン

2008年02月19日

"愛に生き愛に殉じた男”を描いた傑作!! 「ドクトル・ジバゴ」

ドクトル・ジバゴ 特別版
おすすめ度 :
コメント:究極の愛とは


この映画は巨匠デヴィッド・リーンがロシア革命を背景にした激動の時代を生き抜いた男女の”愛”を描いた傑作である。


革命という嵐がロシア全土を吹き荒れた時代に自らの運命と闘い、愛を燃焼させた男と女の壮大な物語だ。


ノーベル文学賞を得たソ連人作家パステルナークの長編小説「ドクトル・ジバゴ」の映画化は大変な苦労の末、完成した。最大の難関は冷戦下のためソ連での撮影が出来なかったことだ。


美術監督は1年かけてロシアの大草原や大雪原に似た風景を探し求め、世界各地をロケ・ハン。撮影はスペイン、フィンランド、カナダで行われた。


再現されたモスクワの町並みは何と太陽が降り注ぐスペインの空の下に冬のロシアを現出させたのだ。路面電車まで忠実に再現させた美術スタッフの熱意に驚くほかない。


主人公ジバゴ(オマー・シャリフ)は革命への共感と反発という感情の間で揺れ動き、ふたりの女性を前にして悩む。そして苦難の末、恋人ラーラへの"愛”を高らかに謳い上げるのだ。


ジバゴの生き様は世界中の冷戦下に生きる人々に受け入れられ、圧倒的な支持を受けた。そして65年度アカデミー賞で最多5部門に輝いたのである。


幼い時に両親を失ったユーリ・ジバゴはモスクワの科学者に引き取られる。医師、そして詩人となったジバゴは育ての親の娘トーニャ(ジェラルディン・チャップリン)と結ばれる。


一方、ラーラ(ジュリー・クリスティ)は学生運動に身を投じるパーシャ(トム・コートネイ)に想いを寄せられるが、母の愛人である弁護士コマロフスキー(ロッド・スタイガー)と関係をする。


夜会でコマロフスキーを撃つラーラを目撃したジバゴは、野戦病院で彼女と再会、やがて強い絆で結ばれる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 いずれ捕まるが、先が見えているなら精一杯生きよう。一緒にいられる間はーーー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

束の間のラーラとの愛の日々、ジバゴの愛人となったラーラだったが、ジバゴはパルチザンに誘拐される。その間、トーニャは出産、非情にもラーラが助産婦として呼ばれる。二人の女の葛藤ーーー・


パルチザンから脱走し、ラーラのもとへ向かうジバゴの脱出行は見応えがある。息も絶え絶えになりながら、漸くラーラのもとへたどり着くのだ。
「もっと前に逢いたかった。平和だった頃に」
ラーラが哀切を込めて云うセリフだ。


それも束の間、二人はコマロフスキーの魔手で引き離され・・・・・。


1965年 監督 デヴィッド・リーン 出演 オマー・シャリフ ジュリー・クリ
スティ ロッド・スタイガー 
ニックネーム choko22 at 11:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュリー・クリスティ

2008年02月18日

かっての若手4大スターが競演した名作!! 「若草物語」

若草物語
おすすめ度 :
コメント:何度見ても素晴らしい作品


若草物語」は女性なら一度は手にしたであろうオルコットの名作である。小説の発表以来、過去に何度も映画化されているが、当時のハリウッドの若手スターの競演ということでも、この作品が最高のものであろうと私は思う。


長女メグにジャネット・リー、活発で男勝りのジョーにジューン・アリスン、三女のエイミーにはエリザベス・テイラー、そして末っ子のベスには名子役だったマーガレット・オブライエンという配役だ。


おてんばな次女ジョーが雪道を走り、ひょいと柵を飛び越える、そんなユーモラスなシーンで「若草物語」は幕を開ける。


南北戦争当時のマサチューセッツ州コンコード。マーチ家の四姉妹は慈愛に満ちた母を助けながら、牧師として従軍している父の留守を守っている。裕福ではないけれど、心豊かな毎日、だが、戦場での父の怪我、ベスの病気と、マーチ家を様々な災難が襲ってくる。


「--父の言葉を忘れずに、母上には優しき娘となり、再会のとき”わが小さき婦人たち”への愛がさらに増すように・・・」
従軍している父からの手紙を読む母の回りで父への思いを募らせながら聞く四姉妹。


クリスマスを前に、四姉妹にはそれぞれ欲しいものがあった。メグは羽根飾りのついた帽子、ジョーは新しい小説、エイミーは画用鉛筆、ベスは新しい楽譜。雑貨店のガラス窓から顔を覗かせる四姉妹の幻想的なシーン。


お隣のローレンス家の舞踏会に招待される四姉妹、ジョーもローレンス家の孫のローリー(ピーター・ローフォード)に誘われ、人気のない階段下で楽しく踊り始める。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
      一生、君のそばに・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「−−わかっているわ」
「ずっと君を愛してた」
だが、ジョーは小説を書き上げることを願っていたのだ。

1949年 アメリカ・カラー 監督 マーヴィン・ルロイ 出演 ジューン・アリスン マーガレット・オブライエン エリザベス・テイラー
ニックネーム choko22 at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ジューン・アリスン

2008年02月17日

美しいピアノの旋律にのせて描く”愛”の物語!! 「愛情物語」

愛情物語
おすすめ度 :
コメント:冴え渡る愛のメロディ



この「愛情物語」は1930年代から約20年間にわたり、名ピアニストとして名前を轟かせたエディ・デューチンの波乱に富んだ生涯を描いた作品である。


私はこの映画を大学時代に見て熱い涙をこぼした。切なくも純粋な夫婦と親子の愛情を描いた感動のドラマである。


この作品、ご覧になった方はいるだろうか。これほど”しびれる”映画はめったに見れるものではない。まだの方はぜひともご覧いただきたいものである。


「あなたはきっと成功するわ。あなたは歓びの創造者よ」
親の大資産を継ぎ、社交界へデビューしたマージョリー(キム・ノヴァク)は、そこで偶然にエディ・デューチン(タイロン・パワー)と知り合う。


初めて会った瞬間から二人は惹かれあい、その後、結婚。


彼の才能を愛したマージョリーは天使としてエディが世に出るのを援ける。
「今に世界中の人が僕のピアノに聴き入る。そして僕は親父に言うんだ、もう働かなくていいよって」


だが、幸せの絶頂期にエディの天使は息子の出産の際に天国に召されてしまう。妻を愛していた彼はピアノに触れることも拒絶して長い絶望の時を過ごす。


息子と暮らし始めたものの、自分を父親と認めようとしない彼の様子に、苛立つエディ。マージョリーを思う時、どうしても素直に息子を愛せないジレンマ。


第二次世界大戦に従軍したエディは、前線で壊れたピアノを弾くうちに忘れていた音楽への情熱、人を愛する気持ちを取り戻す。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 人は大きくなるまで何度も泥んこになる。そして成長する。でも、死なない・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

少年の指ををピアノに触れさせながら話すエディ。

ようやく親子の愛情を取り戻したとき、エディは余命いくばくもないことを知らされる。


父親の死期が近いことを知った息子のピーターは父親と二人、悲しみを振り払うように二重奏を奏でる。このシーン、もう涙なしで見られなかった。


「To Love Again」の主題曲がいつまでも耳に残る。名曲とともに生き続ける愛の物語は今も色あせることなく見るものに涙と感動を与えずにはおかないだろう。


タイロン・パワーの指の動きを良く見てほしい。絶妙の指の運びである。公開当時絶賛されたほどだ。陰で支えたのは誰あろう、人気ピアニスト、カーメン・キャバレロである。


愛情物語 オリジナル・サウンドトラック/サントラオリジナル・サウンドトラック


1956年 アメリカ・カラー 監督 ジョージ・シドニー 出演 タイロン・パワー キム・ノヴァク
ニックネーム choko22 at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | キム・ノヴァク

2008年02月16日

グレイス・ケリー 公妃への旅立ち「上流社会」

上流社会、まさに題名どおりに超・上流社会に飛び込んだグレイス・ケリー、彼女の最後の出演作である。

上流社会 特別版
おすすめ度 :
コメント:生きているのが楽しくなる


1955年、モナコ公国のレーニエ大公と運命的な出会いをしたグレイス・ケリーは翌年1月には婚約を発表。


ハリウッドの人気女優が一国の妃になるというニュースはシンデレラ物語として世界を駆け巡った。注目された最後の出演作品は「フィラデルフィア物語」の再映画化で、今度はミュージカル版として製作された。


映画はルイ・アームストロングがバスの中で愛嬌たっぷりに歌う「ハイ・ソサエティ」の軽快なメロディで幕を開ける。まさにハッピーエンドを予感させる導入部だ。


撮影が始まって間もなく、ケリーは監督に申し出たそうだ。「役作りのために、(婚約者である)レーニエ大公から貰ったエンゲージ・リングをはめて出演してもいいかしら」と。


以来、ケリーの指には12カラットの大粒のダイヤとルビーを散りばめた指輪がはめられ、撮影の合間にじっとそれを見詰めて微笑んでいたという。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私の心は恋の炎をともす男を求める。いつの日かあの人が
迎えにくるの。甘い生活、私はすばらしい

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼女のモノローグはまるでレーニエ大公に向かって言うようだ。


シナトラとクロスビーは、ケリーの結婚を祝福するかのように、熱のこもった歌声を披露する。アームストロングもクロスビーとの掛け合いを楽しそうに演じた。


デクスター(ビング・クロスビー)はニューポートに住む百万長者。隣家の富豪の娘トレイシー(グレイス・ケリー)は彼の先妻だが、ジョージ(ジョン・ランド)と再婚の予定だ。


邸には結婚式の取材のため、ゴシップ雑誌の記者マイク(フランク・シ
ナトラ)とカメラマンのリズ(セレステ・ホルム)が来訪。かくして結婚式前夜のパーティが始まる。


トレイシーは酔っ払った挙句・・・ハッピーエンドを迎えるのだが、結婚式の相手たるや・・・。


ヨットの船上で歌うビングの「トゥルー・ラブ」は絶品であろう。


何とも実に微笑ましい作品である。


1956年製作 アメリカ・カラー 監督 チャールズ・ウォルタース 出演 グレ
イス・ケリー フランク・シナトラ ビング・クロスビー
ニックネーム choko22 at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | グレイス・ケリー

何でも好きなことをして見ない? 「ローマの休日」


ローマの休日 製作50周年記念 デジタル・ニューマスター版
おすすめ度 :
コメント:恋愛映画の最高峰


無名の新人女優がアカデミー主演女優賞を獲得、ショート・カットのヘップバーン・
カットは日本女性を虜にした。これは世界中で大ヒットを飛ばした記念碑的名作であ
る。

監督はウィリアム・ワイラー、主演オードリー・ヘップバーン、グレゴリー・ペック、カメラマン役のエディ・アルバートがいい味を出している。1953年製作のモノクロ作品で、撮影の全てはローマで行われた。


アン王女とジョーが歩いた“永遠の古都“ローマの名所が満載である。観光映画として見ても面白い。


映画は某国のアン王女(オードリー・ヘップバーン)が親善旅行で各国を廻りローマに到着、大使館でレセプションを行うところから始まる。


王女にとってなんとも辛い旅であることを分からせてくれる。お相手するのは老人や貴族ばかりでつまらない。部屋に戻った王女は疲れでヒス
テリー症状になり、付き添いの医師から睡眠薬の注射をされる。


王女は外の賑やかな夜景が気になって仕方がない。こっそりベッドを抜け出し、大使館に商用で入っていた軽三輪トラックの荷台に乗り込んで大使館から脱出する。


道を渡る人を避けるためトラックが止まったとき、王女は車から飛び降りる。そして、フラフラ夜の街を歩き出す。


一方、ジョー(グレゴリー・ペック)は新聞記者仲間とポーカーをやっていたが、明日は王女の会見に出るからと帰って行く。ジョーの連れのアービング(エディ・アルバート)は「もう一勝負やるか」と残る。


その帰路、ジョーが道端で寝ている王女と出会う下りが面白い。睡眠薬が効いてトンチカンな受け答えをする王女を、ジョーは酒に酔っていると勘違い、タクシーを呼んで送ろうとする。


「どこに住んでいる?」と聞くジョーに「コロシアム」と答える王女。彼は仕方なく自分の安アパートに連れて帰る。


翌朝、目覚めたジョーは12時を回っているのに気がつきがっくり。11時45分から王女の共同記者会見には間に合わず、出社する。編集長は「今頃まで何をしていた?」と聞く。


「王女の会見に出ていた」と答えるジョー。「フーン、会見ねえ・・・
。で、王女はどんな服装をしていた?」「服装・・・(つまる)」。アン王女の会見は王女が高熱のために中止と知っていて、ジョーに色々質問していじめる編集長が面白い。挙句、新聞で王女の顔写真を見るや、特ダネを取る賭けをするのだ。


家に飛んで帰ったジョーはアン王女がまだ眠っているのを見てホッとする。新聞を手に写真と見比べるジョー、そばに屈み込んで「王女さま」と耳元に語りかける。「はい、何ですか」と王女が夢うつつで答える。


完全に目覚めたアン王女はジョーと会う。
「こんにちは」とアン。
「君の名前は何て云うの?」
「私は・・・アーニャ」
「こんにちは。アーニャ」


アンはジョーに促され浴室で着替えをする。その間、ジョーはアービングに電話をして「大きな声で云えないが大変な特ダネなんだ。写真を頼みたい」という。


王女はジョーにお別れの挨拶をして外へ出て行く。こっそり後をつけて行くジョー。アンは美容室に入る。トレヴィの泉のすぐ傍だ。ここでかの有名なヘップバーン・カットの誕生だ。


サンピエトロ広場でアイスクリームを買って舐めながら歩く王女。つ
けて来たジョーが階段を下りてきて、アンに偶然出会ったようなふりをして見せる。


「やあ、君か。(と見る)」
「似合って?(と髪の後ろを見せる)」
「とてもね」
「あなたに白状しないといけないことがあるわ。実は昨夜、学校を逃げだしたの。ほんの1,2時間のつもりだったのが、睡眠薬が効いて」
「フーン、そうだったのか」
「そろそろ帰らなきゃ。タクシーで帰るわ」
「もう少し遊んでからにしたまえ」
「ではあと1時間・・・」
「思い切って一日中遊ぶんだ」
「前から憧れてたことをしたいわ。」
「どんな?」
「何でも気が向くままにしたいの、一日中」
「髪をきるようなこと?」
「カフェに入ったり、ウインドー・ショッピングをしたり、雨の中を歩いたり、楽しみたいの。冒険も少し・・・、下らないと思うでしょ」
「素晴らしい、よし、では一緒に遊んで回ろう。最初はカフェだ」
ジョーはアンの手を取って立ち上がる。


「凄い特ダネだ。5000ドルにはなる。6:4でどうだ」
「悪くない話だ」とアービングは話しに乗る。


ここからは名所巡りになる。まずはコロシアムを見学、ライター型カメラで王女を写真に収めるアービング。


次はアンをスクーターの後ろに乗せて、ローマの町を走るジョー。その後を無蓋者で追いかけながら写真を撮るアービング。


『真実の口』。ジョーが説明する。
「真実の口だ。嘘つきが手を入れるとーー咬まれるという言い伝えがある」
「恐いのね」
「やってごらん」
おそるおそる手を口に入れかけるアン。ライターを構えるアービング。アン、慌てて口から手を離し、「あなたが」とジョーに言う。「いいとも」そういって手を口に持って行く。じっと見守るアンの真剣な顔。


ジョーが口の奥まで手を入れる、途端、ジョーが叫ぶ。「ウワッ」アンがジョーの体にすがりつく。ジョー、抜いた手をアンに見せる。手首が無い。絶叫するアン。ジョーは背広の袖から手を出す。アンはジョーの胸を両手で叩きながら言う。
「ひどいわ。騙したのね」
ジョーはアンを抱くようにしていう。
「ごめんよ。大丈夫?」
「びっくりした」
「次、行こう」とジョー。


その夜、ジョーとアンは船上のパーティ会場へやって来る。ダンスをする二人。アンは目を閉じてジョーに抱かれて踊る。曲が終わる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ブラッドリーさん、何故私に一日中お付き合いしてくさったの?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「何となくだ」
「本当にご親切ね」
「それほどでも」
「私のためにこんなにまで」
「・・・・・(答えられない)バーで何か飲もう」
アンと連れ立ってバーへ。そこで美容師のマリオと会う。アンを踊りに誘うマリオ。


秘密警察のボスが王女にダンスの相手を求める。踊りながら耳元で囁く。
「王女さま、お帰りを。橋の上に車が待っています」
「人違いです」
だが、部下たちが強引に連れ出そうとする。ジョーを必死で呼ぶアン。


ジョーが駆けつけ秘密警察官との間で乱闘になる。カメラを手に椅子の上でギターを振り回しているアンの姿を狙うアービング。マリオも乱闘に加わる。

ジョーとアンは水の中に飛び込む。岸に上がる二人。寒さに震えるアンに自分の上着をかけてやるジョー。


ジョーのアパートに帰って来た二人、服が乾くまでの会話。ニュースが聞こえてくる。国民が王女の病状を憂いているとの報道だ。アン、ラジオのスイッチをきる。


「聞きたくない・・・・・もう帰らなければ(泣きながらジョーに縋りつく)」
「(優しく抱きながら)話がある・・・」
「云わないで、なにも」
抱き合い頬を摺り寄せる二人。二人それぞれの思いが痛いほど伝わってくる名場面だ。


アンを車で送って行くジョー。
「次の角で止めて」
「ここ?」と車を止める。
そこは大使館の入り口が見える場所だ。じっと門を見詰める王女。
「ここで降ります。私はその先の角を曲がります。あなたは、このまま帰って。私の行き先を見ないと約束して。決して振り返らないでね、私もそうするわ」
「・・・分かった」
「お別れの挨拶も・・・、(涙ぐみ)云えないわ」
「云わなくていい」
アン、ジョーを見詰めていたが、ひしと縋りつく。キスを交わす二人。別れを惜しむ長い抱擁。アンの頬を流れ落ちる熱い涙。


やがてアンは車から降りる。そして、振り返ることなく角を曲がって行く。じっと見送ったジョー、やがて車を発進させる。



翌日、記者会見場である。アンはジョーとアービングに気づいてはっとなる。ジョーはそれとなく会見の中で心配させないように話をする。


「記者の皆さんにご挨拶を」とアンがいう。
そして、最前列に立つ記者一人一人と挨拶を交わして行く。アービングの番になった。


二人は握手を交わし、アービングはポケットから紙袋を取り出して、
「ローマご訪問の記念写真をお受け取り下さい」とアンに手渡す。


開けて見るアン。乱闘の場面である。手にしたギターを秘密警察官に叩きつけているショット。


「本当にありがとう」


そして、ジョーの番になった。万感の思いを込めて、しばし見つめ合う二人。ジョーに手を差し出すアン。握り返すジョー。
「お目にかかれて嬉しいです」とアンがいう。


最後の別れ、言葉の無い顔の表情だけの演技だ。アンは踵を戻して奥へ入って行く。


会見は終わったのだ。一人になっても立ち尽くしているジョー。やがて静かに会見場を後にする。


こうして有り得ないお伽話は終了した。有り得ないお話を有り得るお話として、感動物語に仕上げたワイラーの手腕に感服。



1953年 アメリカ・モノクロ 監督 ウイリアム・ワイラー 出演 グレゴリー
・ペック オードリー・ヘブバーン エディ・アルバート
ニックネーム choko22 at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | オードリー・ヘップバーン

2008年02月15日

白いくちなしの花が無残に踏みつけられて・・・「旅情」

キャサリン・ヘップバーン臓旅情キャサリン・ヘップバーン旅情
おすすめ度 :
コメント:せつない別れ


今も目を瞑ると、列車から身を乗り出してハンカチを力一杯振るキャサリンの姿が浮かんで来る。それは愛する男への哀切な別れか、戻り来ぬ青春への惜別の気持ちなのか。映画史に残る名場面である。


アメリカからベニスへ観光旅行にやって来た一人の女性。既に婚期を過ぎたオールドミスのジェーン(キャサリン・ヘブバーン)。何気なく入った一軒の骨董屋、その店のレナード(ロッサノ・ブラッツィ)と知り合い、いつしか恋に陥る。二人はサンマルコ広場で夜の多事を共にする。そして・・・。


ジェーンがレナードに抱かれたその翌朝、白々と明けかかったサンマルコ広場を二人が手をつないで歩くシーンは痛いほど胸を刺す。二人の他に人影はなく、鳩の群れが飛び交っている。


レナードには、不仲とはいえ尊がいることを知ったジェーンは身を引く決心をするのだ。


「君を不幸にしたのか?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いいえ、そんなことはないわ。私の生涯で一番幸福なときだったのよ。どうか、それは信じて

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「僕はあなたを愛しているよ。ジェーン、いつまでも愛するよ」
「ええ、このままお別れしたらね・・・。私はこれまでいつもパーティで帰りそびれていたの。帰る時期を知らなかったの。あなたのお陰で私は大人になったわ。いつ帰ったらいいかがわかったのよ。」


これほどハイミスの孤独な心理を・いた作品は滅多にない。


くちなしの花を持って駅に駆けつけるレナード。手を伸ばすジェーン、だが届かない。ホームに散る白い花。



1955年製作 監督 デヴィド・リーン 出演 キャサリン・ヘブバーン、ロッサノ・ブラッツィ
ニックネーム choko22 at 08:08| Comment(0) | TrackBack(0) | キャサリン・ヘブバーン